誰もが知っている名作は、絵本になることでいろいろな世界に私たちを導いてくれます。
教科書や絵のない本で知った人には、自分で思い描いたイメージの世界があるでしょう。
自分のイメージに合った絵本が自分の世界なのではないかと思います。
私は、この物語に母子の愛情の昔ながらの風景と、背景となる街並みに少し古めかしいたたずまいをイメージしていました。
キツネの住む世界と、手袋を売っている帽子屋のある街並みに少しさびれた田舎町を想像していたのですが、この絵本はそのイメージを塗り替えてしまいました。
この絵本は冬の風景をメインに描きながら、幻想的な世界の中に、母ギツネと子ギツネを登場させて奥ゆかしくも存在感をしっかりと伝えています。
黒井さんの淡い淡い自然描写、夢のようにふんわりと描かれた街並み、幻想的な『手ぶくろを買いに』の世界です。
思い切り懐かしさと哀愁を感じさせられました。
物語を読みながら、黒井さんの絵の世界を楽しみ、余韻の残る作品だと思います。