『ルリユールおじさん』のあとに読みました。
植物学者と絵を描く事が好きな「さえら」という日本の女の子のひと夏の交流。
舞台はフランス国立自然史博物館の植物園をモデルにして描かれたそうです。
「あ〜、『ルリユールおじさん』のソフィーは、植物学者になったんだっけ。」と思い出しつつ読みました。
樹齢400年のアカシアの木が、こちらにも出てきて美しい。
登場した植物の多種多様さ。
その生態をさりげない台詞の中で、読者に興味を起こさせます。
植物園にスケッチにやってきて、神出鬼没のさえら。
ときに、庭師を驚かせ困らせ。
植物学者にひまわりの種をもらい、育てることの喜びを得て…。
この本で、ソフィーに再会できるとは思いませんでした。
植物園の描写はいうまでもなく、さえらの動きだけでその表情が見えてくる絵でした。
かわいらしいしぐさに惹かれ、一緒にひまわりを育て、植物園をかけ回っている錯覚を覚えました。
“心の中にしっかりと根をおろす”という言葉が印象に残りました。
エンディングの素敵な冬の植物園の情景が、目に浮かぶようでした。
「長生きなんだな〜、ぼくの人生の何倍も生きて、この世の中を見てきたんだ〜、は〜。」とため息ひとつの息子でした。
この植物学者のモデルとなった方とは、35年来の親交があるそうで
す。
その草花ひとつひとつのエピソード話に“私の耳も目も鼻も子どものそれになった”という解説を読み、この強烈な好奇心こそがすばらしい作品の源なのだと納得しました。
そして、さえらは、いせ先生の分身ですね。
私のお気に入りがまた一冊増えました。