日本人がもっている‘森’のイメージって、この‘もり’とはすこし違っているような気がします。広くて深い‘もり’は‘山’とも違い手入れも行き届きお散歩にはもってこい。紙のぼうしをかぶってひとりで入っていくとひんやりとした、すきとおった空気がぼくを迎えてくれるようです。
そんな‘もり’で出会うどうぶつたちは個性豊かなたのしいなかま。彼らが光と影のもりのなかにさまざまな色を添えてくれるようです。モノクロなのに明るかったりたのしかったりするのは、どうぶつたちが本の中でいきいき輝いているからじゃないかと思います。
こどもたちはじっくり絵を見ています。モノクロのむこうに自分だけのカラーの絵をみつけたように。そして次々と話しかけてくるどうぶつたちの声に聞き入っています。ゆっくり絵を堪能させながら時間をかけて読んだ後、「ほ〜っ」と深いため息をおとなもこどももつい口にしてしまうほど、ひきこまれるお話です。
「人に絵本を読んでもらうなんて、何十年ぶり!」というママが子どもと一緒に(文字を追わずに)聴いてくれました。最後に彼女が涙を流して「こころがあったかくなったぁ・・」と言ってくれたこと、そのときのその場の空気とともに5年たった今もわすれられない思い出です。