ドキンと胸が鳴る、そんな絵本に出会えたという印象です。ヘレン・オクセンバリーさんの絵は温かくて大好きだし、作者はなんとご主人のジョン・バーニンガムさん。さらに訳は谷川俊太郎さん。読む前から期待せずにはいられませんでしたが、期待以上に、心に響きました。
ママの「あかちゃんがくるのよ」という台詞で始まるこの絵本。
「いつくるの?」「なんてなまえにするの?」「あかちゃんは なにに なるのかな?」たくさんの疑問をママに投げかけるぼく。ママの返答にも、ちょっとだけ嫉妬を込め、強がり、“あかちゃんなんて…”の思いは否定できません。
でも、季節はすぎ、ママのお腹はどんどん大きくなっていく。比例して、ぼくの、お兄ちゃんになる期待と不安も。
長い時間、葛藤していたけれど、赤ちゃん誕生の季節になり、ぼくが「あかちゃん いつ くるの ママ?」「あかちゃんに あいたいよ。」と話したときには思わず涙が出そうになりました。
そして赤ちゃんは生まれた…。
お兄ちゃんの準備ができたから、生まれてきたのかもしれないね。待っていてくれたのかもしれないね。そう思いました。
ラストは、おじいちゃんと病室へ向かうお兄ちゃんのひとまわり大きくなった背中の絵で締めくくられています。背筋をピンと伸ばして、腕にはプレゼントを抱えて…ね。
赤ちゃんの姿は描かれておらず、完全にお兄ちゃんにスポットがあてられているのが印象的。大きな大きな成長に、心から拍手とエールを贈りたいです。