表紙絵の黒い羽色を見て、「黒」って上品な色だな〜って改めて思いました。
三羽の年老いたからすの会話の中の回想から始まるお話です。
ちびがらすが一緒に遊ぶ事を切望しても、近寄らせず脅しいじめた若い頃のからすたち。
羽根が生え揃い飛べるようになると、身軽な事も手伝って誰よりも上手くなったちびがらす。
それが癪に障ったのか、さらにからかい混じりの悪い冗談を言うと、その言葉を真に受けてしまうちびがらす。
遅く生まれたとか体が小さいとか羽根が生え揃わず同じ遊びに参加できないという事は、ちびがらすにはどうしようもない事。
本人がどうし様もできない事を突く周囲の冷たさこそ“いじめ”です。
さて、仲間に入れてもらいたくて一人前と認めてもらいたくて、ちびがらすが決意したことは、・・・。
仲間の冷たさを自分の幼さ(小ささ)故と思っていたのでしょうか。
いえ、いずれ大きくなる自分を信じていたからあんなに明るく前向きだったのかもしれません。
ほかのからすを恨むこともないちびがらすの無垢さが痛々しい。
そして、この無垢さが奇跡を手繰り寄せる勇気を起こさせます。
ちびがらすの翼が月そのもののように輝くまでを描写する詩的な文が、美しくはっと息をのむ迫力がありました。
この話を語るからすの心情の中に、奇跡を目の当たりにした一方、過去の自分の行いの後味の悪さもあることが伝わって来ます。
主人公はむしろちびがらすよりも、このいじめたからすの方なのではとも思いました。
5歳からお勧めとされていましたが、むしろ中・高学年の子どもたちのほうが作者のメッセージをくみ取れるのではないかと思いました。
12歳の息子は、「ちびがらすの“頑張り屋の魂”は、誰よりも強かったんだなぁ〜、だからレジェンドになったんだ!」と独り言を言いっていました。
眩しいほどの銀箔の羽根が、ちびがらすの純粋無垢さの象徴のように見えました。