カラスの中でちびで生まれて、成長が遅いちびガラス。
仲間からからかわれ、ばかにされ、相手にされないちびガラス。
これは明らかにいじめの本なのですが…。
ちびガラスの健気さに心打たれます。
月まで行って来いという冗談を、真に受けて月を目指したちびガラス。
そのために、地上に落ちて意識をうしなったちびガラス。
「ぼくにはできなかった」と、あまりに純粋なちびガラス。
あれは冗談だったと、許しを請うカラスに、一緒に遊ぼうと天真爛漫なちびガラス。
その姿に、多かれ少なかれ周りのカラスの一羽と同じであった人間は救われた気持ちになったりするのではないでしょうか。
自分たちが許してもらえた…。
ちびガラスに焦点を当てるととても心温まる物語。
周りのカラスに焦点を当てると少し陰湿な物語。
そんな構造を抱えて、マーカス・フィスターの絵は両者をくっきりと描いていて見事です。
低学年で読むのと、高学年で読むのでは、その意味合いが違ってくる絵本だと思います。