このお話のことを知った時、私はたしか小学生でした。家にあまり絵本はありませんでしたが、近くのこどもセンターで借りてきた絵本数冊を母が朗読したものをカセットテープに録音してくれました。妹と私はそのテープを何度も何度も飽きることなく聴きました。中でも「おじさんのかさ」はお気に入りだったので、この絵本を手にしたり題名を聞いたりする度に、今でも母の声が聞こえてきます。このことに気づいたのは私が結婚した頃でした。母の声と愛情がここまでも鮮明に私の心の中に残っているということに感動して涙が出ました。
一番はっきりと聞こえるのは最後の奥さんの一言。「あら、かさを さしたんですか、あめが ふっているのに。」これがたまらなくおもしろいんですよね。
まだ私の息子はこのお話に興味はありませんが、今から私はとても楽しみにしています。何度でも望むだけ読んであげたいと思います。そしていつか息子が大人になりこの絵本を見せた時に「これ好きだったんだよなぁ。今でも母さんの声が聞こえるよ」なんて言ってくれたら、私はきっと嬉し涙を流すことでしょう。