父親とボートに乗って貯水池から見下ろしたのは自分の育ったふるさと。
貯水池というには壮大な湖のような風景の中に、生まれ育った家や通った学校、祖先のお墓、遊んだ川、遠くに眺めた鉄道が収まっています。
なんとも不思議な感じですが、作者は思い出として受け止めています。
ふるさとの素晴らしさを語るジェーン・ヨーレンは、『月夜のみみずく』で見せてくれたのと同じ詩情たっぷりな文章で、思い出も、風景も、主人公の女性も包み込んでいます。
寂しさよりもすがすがしさを感じるのは何故でしょう。
蛍は話してあげなければダメといった母親の言葉がこの絵本に溶け込んでいるからでしょうか。
小さいころの思い出を、バーバラ・クーニーがまた繊細な絵でほのぼのと描いています。
思い出は大切にしたい。
そう言っているようです。