沖縄の孤島の大自然と、環境。開発による経済効果と環境破壊。それに加えて、戦争の悲惨さの体験。
言葉にすると堅苦しい内容が、絵本の中にぎゅうぎゅうにつまっていますが、とてもファンタジックな絵本です。
開発のために島を訪れた技師と島に住むおばあさんの会話で話が展開します。
「海がお母さんだ」なんて、おばあさんもすごい。おばあさんの語りはすごく説得力があります。私も技師の立場で感動してしまいました。
技師の思いもとてもよくわかります。技師は、この島を良くしようとしているだけなのです。
それが、日本が進んできた道だし、自分も島にリゾートを求めてまったく違和感がありません。
しかし、経済のためにはこの本のような「技師」が必要なのです。そして、環境保護のためには「おばあさん」が必要なのです。
立松さんは、自身の代表作「遠雷」を、絵本で表現してみたのでしょうか。(高度成長の中で崩されていく人間の心…、立松ワールドのテーマです)。
スズキコージさんの絵も、この物語にこめられた思いを見事に表現していると思います。
高学年にお薦めの本です。
子どもの視点から出る答えが、これからの日本の道を作っていくのだと思いました。