ポーランドから逃げることになった医者の母娘。七歳のマルカは途中で熱を出したため、現地の人に委ねられることになります。
追っ手が迫る中、足でまといになる少女を置いていったのは致し方のなかったことだったのです。
マルカの視点と母親の視点の双方から描かれます。生き延びるというのはこれほど過酷なのかとさえ思われました。
マルカの母・ハンナのいつ何時でも動いていないと気がやすまらない性格というのが印象的でした。
ユダヤ人であっても医師という資格があれば、迫害を受けないかもしれないという錯覚、一緒に逃げたユダヤ人の中にもお金持ちであればという錯覚もあったかもしれません。
悉く現実の前で、その思いが覆されていくのも皮肉なめぐり合わせという感じがしました。
一人ぼっちになったマルカが生き延びようと、小さな体で一生懸命生きる姿に心を打たれます。
現実にあったことがベースにあるので、その凄惨さに胸をつかれる思いがしました。