伊藤&岡本先生の作品では「つくも神」(ポプラ社)が印象に残っています。
お子さん向けの作品かもしれませんが、大人が読むとえもいわれぬ子ども時代へのノスタルジーを感じてしまうかも。
わたしの少女時代にはこういう経験はありませんでしたが、子どもならではの感性や純粋無垢さが、曇ってしまった大人の目には見えないものが見えるのかもと納得してしまいました。
人間の目に見えるものなどこの世の中のほんの一部。
自然の力や目に見えないものの存在を畏れ敬う心を大人になるに従って薄れさせてしまう、即物的な人間社会。
そんなことをふと考えさせられました。
灯りの消える事の無い現代社会を表した眩しいほどの明るさ、狐火の登場と共に狐の嫁入りの厳かさを表した暗闇のコントラストが素敵です。
狐の嫁入りの行列の不気味さの中、大道芸やコックに狐をさせてしまうユーモアもお話を明るく終わらせているアクセントになっていると思います。
これから夏に向けお薦めしたい作品です。