YAジャンルを読み始めてから世界の現代史についてもあまり知らないということに改めて気付きました。
この作品は、1981年。北アイルランド問題が起きています。
背景をあらかじめ頭に入れておいた方がかいいかもしれないとあとがきから読み始めました。
18歳の高校生ファーガスは、泥炭掘りに出かけた湿地で少女の遺体を見つけます。
いきなりのショッキングな出来事なのですが、遺体は直近のものではありません。
遺体の身元の探索、ファーガスの進路、IRAの一員の兄という大まかにいうとこの三つが重なりあったところで物語が進行していくという重厚な話です。
アイルランドの独立を目指して活動する兄と、イギリスの大学で医者になるという夢を持つファーガスの生き方は同じ兄弟でありながら、全く真逆。
複雑な状況の中、これからどう生きるのかということをファーガスを通じて深く考えさせられました。
この作者は、この作品を含めて数作を発表しただけということがとても残念でした。
あとがきの中で訳者の千葉さんが見つけたアイルランド関連の本も上げられているので、読書の楽しみも広がりそうです。
カーネギー賞受賞作品で、YAジャンルになる本ですが、一般向けとしても遜色ない作品だと思います。