絵本は、書き手を選ばない。
通常は絵本作家が文も絵も描くことが多いが、時に絵本作家同士が互いに文を担当したり絵を描いたりすることもある。
絵本作家だけが絵本を書くことはない。
特にそれは文の方だが、詩人も書く。漫画家も書く。映画監督も書く。俳優も書く。落語家も書く。アナウンサーも書く。
小説家ももちろん書く。直木賞作家も芥川賞作家も書く。
文学の世界では漫才師が小説書いたって驚天動地していたが、絵本の世界では驚かない。
絵本はとても寛容なのだ。
この絵本の文を書いたのは、『この人の閾』で第113回芥川賞を受賞(1995年)した保坂和志さん。(絵は、小沢さかえさん)
芥川賞そのものがストーリー性よりも文章の巧さに一目を置くところがある文学賞だが、その文体が絵本に合うかどうかは作者次第であろう。
どちらといえば、詩人の、一行一行刻むような散文があっているような感じがする。
この作品の場合、「チャーちゃん」という一匹の猫が主人公だ。
しかし、この猫は死んでいる。
死んでいるのだが、踊っているのだという。
この猫がいる世界は死後の世界であるが、そちらではかつて生きていたものたちが楽しそうに踊っているという。
だから、生きていた世界ではパパもママも泣いているけれど、チャーちゃんのいる死の世界ではみんな楽しく踊っているのだ。
そう思っている(想像している)のは、きっと生きている世界にいるものたちだろう。
こういう深い作品も、絵本は平気な顔をして受け入れてしまう。