パトリシア・ポラッコの体験として書かれた絵本。『彼の手は語りつぐ』も、彼女の祖先の実話に根ざした話だったと思います。ポラッコはまさに語るために生まれてきたような作家なのだと思います。
LD(学習障害)というのは、トリシャにとって見極めが難しい児童たち。この絵本を通して、決して勉強嫌いな訳ではなく障害というものを実感しました。回りの子どもたちからは奇異に思えるかも知れないけれど、理解と解きほぐしてあげるだけの包容力を持った教育が必要なのでしょう。
フォルカー先生の教育はまさにそれでした。黒板にスポンジで字を書いていくことで字を教え、さまざまな授業をしてくれます。
フォルカー先生にとっては、教育実践のために学んできたことであり、ことさら特別な意識を持っていなかったのでしょう。トリシャとある結婚式で再会した先生ははっきりトリシャを覚えていなかった。
大人にとっては特別ではないことが、子どもにとっては心に残るとても大変なことだと判ります。
日頃の読み聞かせ、PTA活動など子どもに接する機会の多い自分ですが、子どもたちにとってどのような存在になっていくのか、責任もちょっぴり感じました。
息子は、「かわいそうだね」と一言。LDの子は守られないといじめの対象のようです。
きわめて精神的な障害。それを取り巻く世界は悪意のない棘に満ちあふれています。
そして、自分より弱い者がいることで、自分の居場所を見つけたい子どもたち…。