「人間」「猿」という生物の種類を超えて、家族同然となった猿回しと子猿。二人(一人と一匹)の心が通い合う様子が、素朴で力強いタッチで描かれている。猿の健気さ、いじらしさ、人の情の深さなどが、じんわりと伝わり、泣ける絵本。
こういう風に、権力者のワガママに泣かされた人はたくさんいるのだろう。いつの時代にも、形を変えて存在する嫌なテーマだが、最後の場面で大団円を迎えるのでホッとする。いわば、水戸黄門的な、最後に善人が勝つお話は、最近はあまり見ない気がするが、やはり終わりよければすべて良しで、気持のいいものだ。人として大事なものを教われる話で、読みやすく、デザインも素敵で、見どころが多い。お子さんの他に、古典芸能が好きな人にも是非ともお勧めしたい一冊。