心優しい薬売りの彦一がいつもと違う夜道を変える途中に、具合を悪くしてうずくまる老人に会い、女性に会い、子どもに会います。
そのたびに、迷うことなく売り物の薬を差し出すのです。
そして目にした光る桜。
目覚めれば祠の中で眠っていた彦一。
そばに三体の地蔵様が立っていたので、彦一が出会ったのは地蔵様たちだったと思えるのですが、光夜桜、自分も照らす不思議な花びらと、桜の持つどこか不可思議な世界に迷い込んでしまったようなお話です。
何が起こったわけではなく、きつねに馬鹿されたような不思議さ。
余韻だけがとても奥深く、おぼろげで、夜桜のもつ妖しさと少しの不気味さを感じた作品。
絵本にしてはとても文学的で、小説のような文字の間のひだを感じさせる作品。
どこか幻想的で妖しげな世界です。