30余年も前のこと。岩波の子どもの本のシリーズに『アルプスのきょうだい』という本があり、その絵の美しさに子供心に感動しました。その後、図書館でもその本を見つけることができず、記憶だけを大事にしていました。そして、3年ほど前、岩波書店の子どもの本の目録に見つけたのです。アロイス・カリジェ!これがあの美しい絵の作者でした。『アルプスのきょうだい』は、『ウルスリのすず』『フルリーナと山の鳥』の2冊の本となってよみがえりました。
それからまもなく、横浜のデパートで「アロイス・カリジェ展」が開催され、30代最後の誕生日に母、長姉と行ってきました。そこで母がプレゼントに買ってくれたのがこの本です。
ゼリーナ・ヘンツさんには申し訳ないのですが、とにかくこの本は絵が素晴らしいのです。細部まで精巧に描いてあるわけでもないのに、圧倒的な大自然の息吹を感じます。アルプスの山々の厳しさ、山の空気の冷たさ、山の夏小屋の静けさまでもひしひしと伝わってきます。そして大自然の中で自然と上手に係わりありながら生きるウルスリとフルリーナきょうだいの姿に心温かくなるのです。
本のサイズも大きめなので、読み聞かせにも向くと思います。少し長いので、小学校中学年くらいからお薦めです。