小さい時家にあったたくさんの絵本の中でも忘れられない印象的な一冊です。
おやつをお兄ちゃんと分ける時、公園でブランコを取り合う時、お店のたくさんのおもちゃに出会った時、小さかった私がいつも思うことは「あ〜世界に私ひとりだったらこれは全部私のものなのに!」。だから、この本のパーレ君がかなりうらやましかった記憶があります。しかし読み進めていくうちに、どうやら「世界にただひとり」っていうことは、そんなにいいものじゃないらしいぞ・・・と感じ始めたのです。幼いながらも「人は一人では生きられないし、一人ぼっちの独り占めなんて幸せじゃない」という人間存在の根源的な真理に気づかされていたのだと思います。
私が特に好きな場面は、朝起きてお父さんもお母さんもいないとわかったパーレ君が叱られないのをいいことに顔をテキトーに洗っちゃうところです。私が幼い時に読んだ絵本では「鼻の先をちょちょいと濡らしただけ」みたいな訳になっていて、私も母が見てないところではそんな感じだったので、笑ってしまいました。大人になってから手に入れた絵本では「ちょこちょこっとかおをあらいました」とフツーの表現になっていたので少しがっかりしましたが。また、今の本は本のサイズが小さくて子供に読み聞かせるにはあまり適していません。ぜひ、30年以上前に出版されていた大判の復活を願います。
最後のページの、お友達とシーソーに乗るパーレ君の幸せそうな横顔がいいですね。