この本は、我が家の子ども達にとっては、突っ込みどころが満載のお話です。
まずのっけから、主人公ピトシャン・ピトショは、お金を拾って「これで何を買おうかな?」とつぶやきます。日本だったら、「良い子は交番に届けましょう」となるはずなのに、つい「オイオイいいのか、ピトシャン・ピトショ」と言いたくなってしまいます。
そして、「タネをとったり、芯をとったりしなくていいから」という理由でピトシャン・ピトショが買ったイチジクから木が生えて、やって来たのは、なんとも怖そうなオニ。オニといいながら角がない。でも、口は耳まで裂けていて、耳からも毛が生えているようないかつい男です。
オニに捕まって袋に入れられたピトシャン・ピトショは、途中で逃げ出し、代わりに石を詰めますが、なぜオニは気づかないのでしょう。
帰宅したオニを待っていたのは、おかみさんのカトリーヌ。オニなのにカトリーヌ。なんて美しい名前なのでしょう。
そして、オニが袋の中身を大なべに移すと、石がごろごろ転がり出して、カトリーヌの鼻にゴツン。次のページからカトリーヌは、長い鼻にぐるぐると包帯を巻いています。
その後、オニの夫婦は、家に隠れていたピトシャン・ピトショに散々な目に遭わされますが、ピトシャン・ピトショの言うことを素直に信じて行動してしまうあたり、「オニがそんなに素直でいいのか?」とつい言ってしまいたくなりながらも、ちょっとオニに好感を抱いたりもします。
終わり方には、賛否両論ありますが、ピトシャン・ピトショが、せっかく袋から逃げ出したのに、帰らないで、オニを最後まで痛めつけるのは、自分の命を狙う危険なモノは、とことん打ち砕くということなのかもしれません。食うか食われるかの緊迫した関係が見え隠れしているような気がします。多かれ少なかれ、民話には、こんな要素が入っていると思います。
とぼけた感じと怖い感じがうまくミックスしていて、とても良い味の出た本になっています。