クリスマスといえば、街のイルミネーション、男女の語らい、街の雑踏。そして、ジングル・ベル。
なんだかにぎやかなイメージがあります。
でも、本当はしずかな日なんです。
この絵本を読めば、ふっと息をとめたくなります。静かに歩きたくなります。ページを開くのも、そっと。
そんな絵本なんです。
しずかな分、心にしんしんとはいってくるといってもいい。
しずかな文を書いたのはデボラ・アンダーウッドさん。アメリカの人です。
素敵な、しずかな絵を描いたのはカナダに住むレナータ・リウスカさん。
ぬいぐるみのような動物たちの絵は見ているだけで温かになります。
この絵本のレナートさんの功績は大きいと思います。
訳しているのは、江國香織さん。いわずとしれた直木賞作家で、文章の巧さには定評があります。
一ページにほぼ一行の文章の、しずかさといったら。
それでいて、心にうまくはいってくるのですから、不思議です。
ここに書かれているしずかさを少し紹介しておくと、例えば「てぶくろをして とをたたく しずかさ」とあります。
外は一面雪でまっしろ。雪でおおわれたおうちの扉を叩くウサギの子どもたち。手に暖かそうな手袋。
どんどん、ではありません。こんこん、でもありません。ぽんぽん、に近いかも。
あまり大きな音を出すと、雪だってびっくりします。
あるいは、クリスマスツリーの「あかりのともる しゅんかんの いきをつめた しずかさ」。
大きなツリーのまわりには仲のいい仲間たちが集まっています。いよいよツリーの点灯です。それまで騒いでいた子どもたちも、その瞬間には息をつめてツリーのてっぺんの星を見つめます。
こういう経験、あるでしょう。
「そりの すずのねに みみをすます しずかさ」。
雪が降る続ける外を見ながら、サンタさんが来ないかと待っています。サンタさんはトナカイにひかれてそりできます。
ちりんちりんと、しずかな鈴の音をさせて。
今みたいににぎやかな夜では、サンタさんのそりの鈴の音なんか聞こえないでしょうね。
だから、せめて、クリスマスには、しずかに、しずかに。