「冬ごもり」という言葉があります。
寒い北国では冬の間家の中に籠りがちになることを指します。
「待つもの郵便ばかり冬籠」(宮部寸七翁)の俳句のように、外の世界とのつながりが極端に少なくなるのもこの時期です。
インターネットが発達した現代ではこの俳句の味わいも少なくなっていますが。
「冬ごもり」は、動物の世界も同じです。
動物であれば、「冬眠」となります。
冬眠する動物は多いですが、その代表的なのがクマではないでしょうか。
アメリカの絵本作家によるこの絵本には冬眠前のクマの、ユーモラスな姿が描かれています。
冬が近づいてきて眠くなったクマには眠る前にみんなに話したいことがあります。
ところが、ネズミくんもカモくんもカエルくんも冬支度でクマの相手をしてくれません。
それどころか、冬のために木の実を集めるネズミくんを手伝ったり、南の暖かい国に旅立つカモくんにはその方角を調べてあげたり、カエルくんの冬眠のための穴を掘ってあげたり、とうとう話したいことはお預けとなってしまいます。
そして、雪が降り始め、クマも冬眠にはいってしまいます。
やがて、春になってクマは冬眠から覚めて、ネズミくんたちと再会します。
さて、クマは何をみんなに話したかったのか、思い出したでしょうか。
絵を担当しているのがエリン・E・ステッドさん。
この人の絵が素敵なのです。
フィリップ・C・ステッドさんのやさしい物語もいいのですが、エリンさんの絵がこの物語を何倍にもあったかいものにしています。
特にみんなと話ができなくてポツンと立ち尽くすクマに降ってくる雪のシーンのさみしさ、静けさは胸にじーんときます。
北国の人にとっては長く辛い冬。
何冊かの本を持って「冬ごもり」をされるならば、この絵本も加えてもらいたい。
きっと春になるのが楽しみになる、そんな絵本になると思います。