何度かレビューを書きかけて、でも書けなかった絵本です。
なにか、言葉にできない想いが込み上げてきて、上手く言語化できなくて、もどかしい気持ちになった絵本です。それほどに、深く、その時々で、異なる感情が湧いてくる不思議な絵本です。
私が初めてのらねこに出会ったのは、学生時代でした。当時はこの絵本がこれほど深く、私の人生に寄り添ってくれる一冊になろうとは思いもしませんでした。きっとまだあの頃は私も、自分より大切な人に出会ってなかったから。この絵本の本当の素晴らしさを感じることができなかったのだと思います。あれから、人を愛し、自分の命より大切だと思える幼子を抱くことができ、のらねこは私そのものと思えるようになりました。
愛する人に出会えた幸せ。守りたい人を授かった幸せ。私を生きている幸せ。そのことをしみじみと有り難く思えるのは、この絵本に出会えたからだと思うのです。
どんなにお金持ちになっても、どんなに人から愛されたとしても、自分が人を愛せること。自分が自分を生きること。それに勝る幸せはないのだと思います。
愛する家族と営むささやかな日常を大切にしながら、のらねこのように自分の人生を全うしたい。
この絵本は私にとって、人として生きる原点を教えてくれる、愛すべき心の友です。