ディズニープリンセス じぶんもまわりもしあわせにする おやくそくブック(Gakken)
SNSで話題!すてきな大人になるために大切にしたい「おやくそく」を紹介する絵本。
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絵本紹介
2022.09.16
このままだと学校にまにあわない。 いつもの道なのに、なにかが変だ。走っても、走っても……。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、大人気ザ・キャビンカンパニーの最新作『がっこうに まにあわない』。タイトルを見ただけでも、ハッとしてしまうこの絵本。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
7時47分。ぼくは玄関をとびだし、ゴウゴウと走り出す。このままだと学校に間に合わない。今日は遅れちゃいけない訳がある。
ランドセルを背負い、帽子をかぶり、必死な形相で地面を蹴りあげ、いつもの道をまっすぐ駆けていく男の子。ところがなんだか変だ。何かが変だ。ワニが潜む水たまり、壁の高さを越えるほど大きな犬たち、ぐにゃぐにゃまがる歩道橋。51分、52分、53分……あせればあせるほど、景色が、時空が、ゆがんでいく。だけど今のぼくはそれどころじゃないんだ!
玄関をとびだし、学校へ向かって駆けだしていく男の子の後ろ姿。何をそんなに急いでいるのか、彼の表情はまだ見えない。……そんなプロローグのようなページをめくって登場するのがこの場面。
「がっこうに まにあわない」
この真剣でひたむきな表情! ちょっと心がざわざわするようなタイトルデザイン! 焦燥感と切実さが一瞬で伝わってくる強さです。今日は8時までに絶対に学校に行かなきゃいけない。なんで寝坊しちゃったんだろう。
たった数分の出来事。けれど、彼の中では永遠に続くかと思われるほどの長い道のり。もどかしく、心が折れそうになるけれど。「どうか気をつけて、ちゃんとまわりを見て、だけどあきらめないで」手に汗をにぎりながら、でもこんな世界をどこかで懐かしく思い、応援をしながらページをめくる。すると最後に待っていたのは、時間を忘れるほど素敵な……。
日常の中で刻まれる平凡な時間を、強く印象的で魅力的な景色として描き出してしまうのは、人気の絵本作家ザ・キャビンカンパニー。凝縮した時間の中で繰り広げられる物語は、年齢に関係なく多くの読者の心を揺さぶります。いつまでたっても踏切があかない時の絶望感ときたら。一方でその背景からは、時間という概念の不思議さに魅入られ、生まれてきた文明や文化がチラチラと顔を出し、大人の遊び心をも刺激してきます。
この緊張感と解放感、どっぷりと浸ってみてくださいね。
知らないような、知っているような
どこまでも濃い数分間。まるで悪夢のようだと思いながら、でも解放された時に味わうのは、不思議なくらいゆっくりまったりと流れる夢のような時間。そして空を見上げれば、そこに輝いているのは、もう二度とその場所で目にすることはできない、あの美しい現象。なんてドラマティックな出来事なのでしょう。当たり前のように淡々と流れる時間の中で過ごしていると、気づくことはなかったかもしれない不思議な現象。けれど、この絵本を読んでいると、なんとなくいつか経験したことがあるような気もしてくるのです。
この書籍を作った人
阿部健太朗と吉岡紗希による二人組の絵本作家。 ともに1989 年大分県生まれ。 由布市の廃校となった小学校をアトリエに改装し、制作拠点としている。 第7回日本童画大賞準優秀賞受賞。 デビュー作『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版)で第20 回日本絵本賞読者賞受賞。 作品に『よるです』『ハテナはかせのへんてこいきものずかん』(偕成社) 『ほこほこのがっこう』『にょっ!』『ゆびさしちゃん』(小学館) 『はみがきあわこちゃん』『ケチャップれっしゃ』『くつしたしろくん』(鈴木出版) 『ひげらっぱ』(ひさかたチャイルド) 『しんごうきピコリ』(あかね書房) 『ねむれないおうさま』(B・エルキン原作 小宮由訳/瑞雲舎) 『おかしな?ハロウィン』(ほるぷ出版)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。