みどころ
おっとっと!
石につまづいて転びかけたねずみくんを助けたのは、とかげくん。
「ありがとう」
お礼を言ったねずみくんは、お花をとかげくんにあげます。
すると、とかげくんも「ありがとう」。
何気ないやり取りですが、段々と2ひきがうちとけて、仲が深まっていく様子が、なんともほほえましいのです。
そして「ありがとう」の輪は、ひまわりさんやおはなさんにまで広がって…… その理由は? 最後には、題名にも納得の心地良さの余韻を味わってください。
『ぽつぽつだいじょうぶ』、『おすわりどうぞ』、『ねえねえ あのね』などの作品で、温かい気持ちを内包した愛らしい動物たちの何気ないやり取りを描いてきた、しもかわらゆみさんが描く最新作。ねずみととかげという異色の取り合わせですが、リアルな造形なのに、表情や感情がたっぷり伝わってきます。寄りそうような花々も、物語をさりげなく導いてくれますよ。子どもから大人まで魅了する心温まる余韻をお楽しみくださいね。
あなたが嬉しいとわたしも嬉しい
「ありがとう」は、どんなときに言うことば?
助けてもらったとき。何かをもらったとき。他には?
共通しているのは、相手がしてくれたことに対して、“自分が”うれしかったときに言う、ということ。
この絵本を読んで、子どもが「そうか!」と言い、生まれた赤ちゃんのもとへかけよりました。
すると、「ありがとう」と言っていて。
何のありがとうかはわかりませんでしたが、赤ちゃんのおかげで、うれしいことがあったということは伝わってきました。
あなたが嬉しいとわたしも嬉しい。
そう思える人がいるということは、とってもステキなこと。
私も一緒になって、二人の子どもに「ありがとう」と言いに行きました。
(うさぎのタンタンさん)
喜びが喜びに
繊細で写実的な絵
それもねずみととかげです。
にもかかわらず、なんて愛らしい!
びっくりしたとかげくんのしっぽがジグザグで愉快だし
蜜をチューっと吸うねずみくんの口元がキュートです。
そしておはなし。
誰かが嬉しいと自分も嬉しいって
私は母になって知りました。
それまでは誰かの喜びをともに喜びながら
どこか羨んでいたように思うのです。
けれど、子どもが嬉しいと文句なく私も嬉しかった。
ねずみくんととかげくんは
ちょっと考えながらそんな気持ちに気付いてハッピー。
そんな気持ちになれるのが「なかよし」なんだね。
ふたりが手をつなぎ花舞うページは
なんともあたたかな気持ちになって
ふたりと同じように目を細めてしまいました。
ふたりともしっぽに結んだ赤いお花が
おにあいです。
(白井音子)