酒井駒子によるロングセラー絵本の新装版
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リジーが選んだのは、ふつうのかたちの雲。リジーはミロと名づけ……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『リジーと雲』。ファン・ブラザーズが手がけるささやかで愛らしいファンタジー絵本。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
おかあさんとおとうさんとおさんぽに出かけた公園で、リジーがまっすぐにかけよったのは、雲うりのおじさんのところ。まるくてほわほわだったり、オウムやウサギ、ゾウのかたちをした雲もありましたが、リジーが選んだのは、ふつうのかたちの雲。
雲とのくらしには、決まりが色々あります。リジーは名前をミロとつけ、毎日ていねいに水をかけ、お天気が良い日にはおさんぽに連れていき、いっしょうけんめいお世話をしました。季節はめぐり、もくもく、もくもく、ミロはどんどん大きくなっていきます。そして、とうとうリジーの部屋の天井をすっぽりと覆いつくすまでになり……。
ミロは大きいわけでも、おしゃれなわけでもない、ふつうの雲。
でも、リジーにとっては最高のすてきな雲。その愛情のかけかたを見ていると、なんだかミロがとっても可愛く見えてくるから不思議です。どんな時でも一緒のリジーとミロ。だからこそ、リジーが好きなことも、機嫌が悪い理由もわかるのです。その手を離さなくてはならないタイミングも。
テリー・ファン&エリック・ファン兄弟が、雲をながめる人たちに贈る、ささやかで愛らしいファンタジー絵本。リジーのまわりはいつもほんのり曇っています。部屋の中でも、晴れている空の下でも、海辺に出かけた時だって。けれどその景色はとても魅力的。
空を見上げるリジーの思い、きっと届いているはずですよね。曇りの日が好きになりそうです。
今、ミロはどこにいるのかな
雲と一緒にくらす。それも部屋の中で。考えもつかなかったことだけれど、絵本の中で、リジーとミロは実に仲良くやっているのです。水をかけてあげる時のミロはどんな反応をするのかな、おかえしに植物に水をかけてくれるなんて粋なことをしてくれるな、大きくなってもミロはやっぱり軽いのかな、せまいところにいるミロは……。読んでいるうちに興味がとまらなくなって、最後のシーンはやっぱり少し寂しくなるのです。気がつけば、自然に空を見上げていたりして。この先も時々思い出してしまいそうな一冊です。
この書籍を作った人
カナダ、トロントのオンタリオ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで学ぶ。インクやグラファイト(黒鉛)を用いた伝統的な技法と、現代のデジタル技術を織り交ぜた作品で高い評価を得ており、昼夜を問わず、幻想的な絵画や肖像画、版画の制作に打ち込んでいる。ファン兄弟としての絵本に、『夜のあいだに』(ゴブリン書房)、第13回ようちえん絵本大賞を受賞した『海とそらがであうばしょ』、『空からふってきたおくりもの』、イラストを担当した『麦畑のみはりばん』(いずれも化学同人)などがある。イリノイ州生まれ、トロント在住。
この書籍を作った人
カナダ、トロント在住の画家、作家。ハワイ生まれのトロント育ち。オンタリオ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでイラストレーション、彫刻、映像を学ぶ。ヴィンテージバイクやぜんまい仕掛けの機械、かなわぬ夢に情熱を傾けている。ファン兄弟としての絵本に、『夜のあいだに』(ゴブリン書房)、『バーナバスの だいだっそう』(学研プラス)、『空からふってきたおくりもの』(化学同人)などがある。
この書籍を作った人
茨城県生まれ、東京都在住の翻訳家。コーヒーとネコと、散歩しながら雲をながめるのが好き。絵本の翻訳に、第13回ようちえん絵本大賞を受賞した『海とそらがであうばしょ』、『すてきで偉大な女性たちが世界を「あっ!」と言わせた』、オリーシリーズ『オリーともりのがっこう』(いずれも化学同人)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。