のりもの好きな子大集合!
絵本紹介
2021.04.22
長年、子どもの本を出版している、出版社の記念日をお祝いする連載。第2回は今年40周年を迎えた、株式会社ひさかたチャイルドさんです。
『どうぞのいす』や『おべんとうバス』などの人気絵本をたくさん出版している、小さいお子さんからパパママにも愛されている出版社さんです。
1981年の出版から40年以上にわたり愛され続けている、ロングセラー絵本。うさぎさんの作ったしっぽのついている「どうぞのいす」に座りたいと思ったお子さんもたくさんいるのではないでしょうか?
相手を思いやる、優しい気持ちを育むのにもピッタリの作品です。
みどころ
うさぎさんが作っているのは、小さな椅子。しっぽもつけて完成です。
「さて、どこに置こうかな」
うさぎさんは、野原の木の下に、「どうぞのいす」と書いた立て札と一緒に置いていきます。うさぎさんのひらめいた「いい考え」とは、どんなことだったのでしょうね。やがて、動物たちが通り過ぎるたびに、色々な出来事が起こるのです。
最初に通りかかったろばさんは、「どうぞのいす」を見ると、なんて親切な椅子だろう、せっかくだから……と、自分は木の下にすわりこみ、持っていたかごを椅子の上に置いたまま、お昼寝をしてしまいます。
次に通りかかったのは、くまさん。椅子の上にはかごいっぱいのどんぐり。隣に書いてあるのは「どうぞのいす」。そこでくまさんは「どうぞならば」と食べてしまいます。だけど思うのです。
「からっぽにしてしまっては、あとの人におきのどく」
そこでくまさんがとった行動とは…? さらにきつねさん、りすさんが通りかかり、それぞれが「どうぞ」の言葉に反応し、考えて、行動し、それはやがてユニークな結末へとつながっていきます。
愛らしい動物たちが次々に登場し、ページをめくるたびに、食べ物がテンポ良くとりかえっこされていく様子は、何度読んでも愉快です。面白いのは、本人たち同士が誰も直接会っていないということ。つながっているのは「どうぞのいす」の言葉のみ。子どもたちは、目の前で繰り返されるその様子を見ながら、どんなことを考えるのでしょうね。
柿本幸造さんの描く、どこまでも温かく優しい絵と共に、きっと長く心に残る絵本となることでしょう。年齢を経ても、繰り返し読んであげてくださいね。
まっ赤なバスに、続々乗り込むのは、ハンバーグくんやえびフライちゃん、たまごやきさんなど、お弁当の定番おかずたち。人気絵本作家・真珠まりこさんが描く、小さいお子さんに絶大な人気を誇る、美味しい食べ物絵本です。
みどころ
まだ誰も乗っていない真っ赤なバスが止まっています。
「バスに のってください」
「ハンバーグくーん」
「はーい」
「えびフライちゃん」
「はーい」
そこへ次々に登場するのはハンバーグくんやえびフライちゃん、たまごやきさんなど、お弁当の定番おかずやおにぎりさんたち。みんな元気に「はーい」と返事をしてバスに乗り込んでいきます。野菜とフルーツも一緒に、さあ、しゅっぱーつ!
ビビッドな色づかいで描かれたかわいらしい絵と、リズミカルにくりかえされる会話は、あかちゃんの頃から楽しめそうな絵本です。「はーい」という声にあわせて小さな手をあげる微笑ましい姿が目に浮かびますよね。乗り物が好きな子は、からっぽのバスの姿だけでぐっと興味をひかれそうです。
少し大きくなってきたら、どこに行くのかな、誰と行くのかな、次のピクニックはどこにいこうか、お弁当は何を持っていこうか。そんな話をしながら読み進めても。お弁当箱をバスに見立てたら、目的地までの道のりもこんなにウキウキするんですね。
最後はもちろん「いただきます!」。一緒にお弁当の絵をつまんで、おいしく食べちゃってください。本棚から「これ、食べよう」って持ってくる、くいしんぼうさんもいそうですね。
(三木文 絵本ナビライター)
「これくらいの おべんとうばこに〜♪」誰もが一度は手あそびしたことがある、おなじみのわらべ歌「おべんとうばこのうた」。さいとうしのぶさんの手にかかると、なんともユニークでとっても美味しそうな絵本に大変身!
楽しく読んでお腹を空かせれば、今日のお弁当も美味しいこと間違いなしですね。
みどころ
「これくらいの おべんとばこに」
手遊びしながら、リズミカルにおべんとうがつめられていく、誰もが知っているあのわらべ歌が絵本になりました!
絵を描いているのは、さいとうしのぶさん。みんなの名前がおいしい食べ物になっちゃう絵本『あっちゃん あがつく』などで、幼稚園・保育園で大人気の作家さんです。見る前からどんなおべんとうが待っているのかわくわくしちゃいますよね。
本を開くと、まず、にこにこ笑顔のおべんとうばこが、リズムをとりながら楽しそうに歩いて現れます。次のページでは、あおむけになったおべんとうばこのおなかに、2つのおにぎりたちが、バレリーナのように優雅に飛び込んで、そしてそして・・・?
出てくる食べ物たちにセリフはありませんが、それぞれにキャラクターがあって、やんちゃだったり泣き虫だったり。おべんとうに入っていく様子を眺めるだけでも楽しい!それぞれのページで、歌に合わせた手遊びのポーズを、さりげなくとってくれているのがまた可愛いのです。
最後、歌に合わせて完成したおべんとうは、市松模様の素敵な包みにのって、お目見えします。
おかずが、ごぼうにフキと、今時の子どもたちからすると、ちょっと渋いかもしれませんが、その美味しそうなことといったら!
おにぎりのごはんのつぶがふっくらとして、味の染みたいい色のシイタケと、飾り切りしたニンジンも色鮮やかに・・・うーん、たまりません。
「楽しい!」も「美味しそう!」も、ギュギュッとつめこまれた、絵本『おべんとうばこのうた』。
目で見て、歌って、めいっぱい味わってくださいね。
鉄道絵本の名手・間瀬なおかたさんが描いた日本列島縦断、新幹線の旅絵本。大人も子どもも、鉄道ファンもそうでない人も胸躍らせる、大迫力のしかけ絵本です。
みどころ
ついに! 2016年3月、北海道から九州まで新幹線がつながります。
雪をかき分けてラベンダー色のラインが入ったはやぶさが北の大地を走る姿を見ると、心が高ぶる方も多いのではないでしょうか!?
では、列島縦断、新幹線の旅に出発しましょう!
この絵本の最大の特徴は、
「表紙から読み始めると北海道から九州へ」
「裏表紙から読み始めると九州から北海道へ」
と、どちらから読んでもつながるように作られていることです。
自分の住んでいる場所から近いほう、なじみがあるほうから読みはじめるのもいいかもしれません。
作者は、鉄道絵本の名手、間瀬なおかたさん。
見開きごとに「秋田・青森・山形」「関東」「九州」など、地域ごとの地図の上を新幹線が走る様子が描かれますが、登場するのは新幹線だけではありません。各地の在来線、私鉄まで、細かに描かれているのです!
千葉の久留里線、静岡の大井川鐡道、和歌山の和歌山電鐡貴志川線、四国の土讃線など、観光列車として、各地で暮らす人々の大切な足として活躍している様々な路線が、特徴をとらえた車両とともに紹介されています。
一体いくつの路線、いくつの電車が登場するのか、とても数えきれないほど!
さらに、真ん中のページの観音開きのしかけを開くと、「全国新幹線路線図絵」が。
鉄道ファンのお子さんは、このページだけでも、何時間でも見ていられるかもしれませんね。
他にも、仙台の伊達正宗像、日光東照宮、金閣寺、長崎の平和祈念像など、各地の名所もあちこちにちりばめられています。
まだ行ったことのない場所、見たことのない名所、そして乗ったことのない電車……読めば読むほど、夢が膨らみます。
1990年のシリーズ1作目から、30年に渡り20冊以上のシリーズが刊行されている「わんぱくだん」。どのおはなしも、冒険心をくすぐる、ロマンあふれるものばかり。どこから読んでも面白い! この機会にシリーズ全巻読破してみてはいかが?
みどころ
乗り物好きな我が子のために、アメリカの絵本作家・シェリー・ダスキー リンカーが生み出した「はたらくくるまたち」シリーズ。今までにない働く車のおやすみを描いた切り口と、かわいい絵に世界中の子どもたちが夢中になりました。
個性的なキャラクターも魅力。男女ともに人気の高いシリーズです。
みどころ
「はたらくくるま」のおやすみ絵本、そんなのってあるの?
大好きな車が登場したら、嬉しくて目が覚めてしまいそうだけど…。
あるんです。乗り物が大好きな子どもたちに贈る「おやすみなさい」の絵本が!
それは作者のこんなエピソードがきっかけ。
“トラックに夢中な息子が寝る前に知っている限りの働く車の名前を挙げて興奮してしまう。そこで働く車たちが一日中元気に活躍し、夜になるとエンジンを止めて静かに眠りにつく様子を親子で想像したところ…ぐっすり、すやすや。”
そうして生まれた『おやすみ、はたらくくるまたち』。
ブルドーザー、ショベルカー、クレーン車にミキサー車など人気の車が次々に登場、広い工事現場で昼間はいったりきたりと大忙し。ビルを建てたり、道を作ったり、力強くがんがん働きます。やがて、日が沈む頃、ようやく一日の仕事も終わり。それぞれがエンジンを止め、ブームをちぢめ、ゆっくりと目を閉じ、夢を見始めるのです。
明るく元気に働く昼間の場面から、日が沈んでいき、だんだん暗くなっていくにつれ、ゆっくりと目を閉じてぐっすりと眠りにつく場面。対照的な二つの場面を繰り返していくうちに、不思議と安らかな気持ちになってきます。確かにこれなら気持ちの良い眠りにつけそうです。頼もしい限りの車たちですが、その寝顔の可愛いこと!
「はたらくくるま」の力強さと愛嬌を併せ持ち、その上「おやすみ」へと誘ってくれるこんな絵本。絶対欲しくなっちゃいますよね。すでにニューヨークタイムズ ベストセラーリスト第1位!これは日本でも人気者になりそうです。
ひさかたチャイルドは、幼稚園や保育園向けの月刊保育絵本「チャイルドブック」を届けてきた「チャイルド本社」の子会社として誕生しました。本社のフロアの片隅にそこだけ色のちがうカーペットを敷いて、ほんの数名で、大きな夢を抱えてスタートした会社です。
『どうぞのいす』『ねずみのでんしゃ』『おべんとうバス』などの絵本を一冊ずつ、心をこめて世に送り出しながら、いつの時代にも変わらないやさしさや明るさが子どもたちに届くよう、祈ってきました。
このコロナ禍の渦中で節目の年を迎え、過去のどの時代よりも今こそ、かけがえのない子どもたちの心の成長に寄り添っていかなければ、と想いを新たにしております。
これからもひさかたチャイルドの絵本を傍らにおいて楽しんでいただけますよう、どうぞよろしくお願い申しあげます。