2013.09.26
その6 お裁縫だいすき! 布のめいろ
「どこ?」シリーズでは、粘土や発泡スチロールなどの材料を使ってジオラマを作っていますが、じつは、今の造形の仕事をする前は、5年ほど、ぬいぐるみデザイナーをしていました。自分でぬいぐるみのデザインを考え、型紙を作り、布を裁断・縫製し、綿を詰めて仕上げるまでが仕事です。いろいろな動物を作りました。もともと子どもの頃からよく、フェルトでぬいぐるみを作ったり、布でお人形を作ったりしていたので、今の仕事の原点も、この頃の手芸的なものから始まっていた気がします。もちろん、子どもの頃はただ好きというだけで、将来、ぬいぐるみデザイナーになろうとか、今のように造形作家になって絵本の仕事をするなんて、夢にも思っていませんでした。
だから今でも、お裁縫は大好きです。街でかわいらしい布を見かけると、買わずにはいられません。そうして買い集めた布類が、我が家には山ほどあります。
さて、みなさん、お気づきの方もいらっしゃるでしょう。そうです、今回の「めいろ」は、布で作りたいなあと考えています。子ども部屋にある布でできているものはなんだろう……? そう考えはじめて、よーし、今回は子ども服で「めいろ」を作ろうと決めました。かんたんなアップリケ・パッチワーク方式です。
「めいろ」の道すじが決まりました。さて、「めいろ」のまわりは、どんな絵柄にしましょう。動物をたくさん登場させたいとか、田舎の風景から始まってだんだん都会に進むようにしようとか、想像がふくらみます。
ここぞとばかり、たくさんの生地のなかから、ストライプ・水玉・花形などなど、いろいろな色や柄の生地を選んで、切って、建物や動物や木や花を作って貼っていきます。
ちくちく刺繍をし、「めいろ」の黄色い道の端にはミシンでステッチをかけました。いつものジオラマ作りの作業とはぜんぜんちがいます。これはこれで大変なところもありますが、お裁縫好きの私にとって、布のお仕事はものすごく楽しい作業です。
あ、そんなところに、我が家の文鳥「ぶんちゃん」が!
本番の撮影当日は、スタジオに床材を置いて、その上にTシャツの「めいろ」を並べました。ここは、子ども部屋の中という設定。ライティングは、窓からさしこむ光を演出します。画面の端に影を入れたりすると、ぐっと雰囲気が出ます。
早いもので、『どこ? めいろでさがしもの』の刊行まで、あと約1か月となりました。本づくりをしていると、時間があっというまに過ぎていきます。
次回で私のこの連載も最終回。子ども部屋のジオラマがだんだんとできあがっていく過程をお見せしたいと思っています。どうぞお楽しみに!
(山形明美)