三保の水辺でたわむれた幼いころから、潮騒は、私の子守唄でした。 今も、みなとの市場の匂いは、なつかしく鼻腔をくすぐり、揚げられたばかりの海の産物たちは、濡れたからだを光らせて、語りかけてくるような気がします。 (トコブシにも言い分があるだろうな)と思ったとたん、次つぎに言葉があふれ、耳の奥に聞こえる波のざわめきにひたりながら、わたしは、それをつむいでいきました。 ―あとがきより抜粋―
◆もくじ◆ 序詞 “こころ” 1 海原散歩 ・磯のやりとり ・どんな かに ・ほやがい ・ほたて ・みるがい ・ふじつぼ ・はまぐり ・あさり しじみ ・ほらがい ・とこぶし ・さざえ ・あわび ・なまこ ・いそぎんちゃく ・わかめ ・もずく ・昆布 ・かずのこ ・はこふぐ ・とびうお ・きびなご ・かわはぎ ・ひらめとかれい ・さんま ・ちょうちんあんこう ・のどぐろ ・ひめかさご ・さば ・のれそれ ・ほおじろざめ 2 こころ ・“思う” ・眠りの岸辺 ・すすき ・吹き降り ・郵便ポスト ・箱 ・断層撮影 ・コクハクブン ・カンニング ・とまどい ・マグネット ・かえりみち ・ソーダ水 あとがき
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