レイラは、海辺に1本だけ生えている松の木。 レイラは、ひとりぼっち。毎日泣いています。 あの日のことは生涯、忘れることはないでしょう。 轟音を立てながら、みるみる近づいてきた巨大な黒い波の壁。 「恐い!」 思わず両手で耳をふさぎ、まぶたを閉じたレイラ。 しばらくすると、レイラは自分ひとりだけが生き残っていることに気が付き、愕然とするのです…。 たったひとりで生きてゆくなんて、そんなの絶対にいや。
ある晩、レイラは家族たちの夢を見ます。 父さんや母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、兄弟や姉妹たち、懐かしそうに微笑んでいます。 「わたしもつれてって!」 そんなレイラに対して、お父さんはあの日起こったことの一部始終を教えます。 家族だけではなく、7万本の松の木たちが、ひとりのこらず身をよじり、両腕をいっぱいに広げてスクラムを組み、レイラを津波から守ろうとしてくれたのだと。 生き残ってくれさえすれば、松の木のいのちを、未来へ伝えることができる。レイラが生きぬいていくことこそ、仲間たち全員の “心のささえ”になるのだと 。 夢からさめたレイラは、以前とは少し違った自分になっているような気がして…。
2011年3月11日、東日本大震災による巨大な津波は、陸前高田市にあった高田松原7万本の松の木をたった1本を残して全て壊滅させてしまった。その、生き残った松こそ「奇跡の一本松」です。 作家の新井満さんは、その姿に希望を見出し、そこに隠された意味を考え、次世代へと伝えていくことができないだろうかと「奇跡の一本松」をモチーフにした写真詩集『希望の木』を書かれました。そして、その本を原作に、「奇跡の一本松」を擬人化した「少女レイラ」とその家族の物語として絵本が制作されたのです。 背景画家・美術監督の山本二三さん(映画『もののけ姫』『時をかける少女』など)によって描かれた少女レイラの顔は、儚くも全てを受け入れていく強さがにじみ出ていて、とても美しい。
命が過去・現在・未来と続いていくこと、命の大切さ、生きることの尊さ。子どもたちの心の中に、人々の心の中にそんな種を残すことができたらという、強い思いから生まれた渾身の一冊です。 付録のDVDには、「陸前高田の過去・現在・未来」「奇跡の一本松にかかわった人々」「読み語り映像」などが収録されています。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
【本書の紹介】 陸前高田市、高田松原の7万本の松の木の中で、災害時ただ1本生き残った「奇跡の一本松」。 1本だけ残った松が、次世代にかろうじて手渡すことができた命。 その「奇跡の一本松」を擬人化した「少女レイラ」の物語は、命が過去・現在・未来と続いていくことを伝えていきます。
【付録DVDの紹介】 本DVD(約50分)には、被災地の過去現在未来、奇跡の一本松の再生と舞台化、本書朗読のための映像などが収録されています。ご家庭では、いのちの大切さを考えるヒントとして、学校では、防災教育をすすめるための教材として、幅広くご活用ください。
@ 陸前高田の過去・現在・未来(8 分) A 奇跡の一本松と陸前高田に関わった人々(10 分) B 絵本「希望の木」読み語り用映像(23 分) 『希望の木』テーマソング〜「いのちのバトン」(6 分) (DVD制作:株式会社サンフォニックス)
※本書の売上金の一部を、東日本大震災復興支援のために寄付いたします。
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