この本は、絵本です。
ああ、当たり前の事を書いてしまいましたね、すみません。
ただ、これは、絵の力が、ものすごく大きい本なので、
特に強調してしまいたくなるのです。
この本を開くと、巨大な世界が待っています。
見ほれる程に、美しい色彩が、網膜をくすぐります。
そして、文章を読んでいくと分かってくる、愕然とするような恐怖。
感想を口に出すのが、はばかられる程です。
私は、この世界の前で、自分の存在が実に無力で、小さくたよりないもののように感じます。
そう、戦争後の、廃墟にたたずんで、意味もなく宙を見上げているような。
この絵本が作られたきっかけは、作画を手がけた木倶知のりこさんのご主人、たべけんぞう氏の「ORANGE OPERATION」という「核の破壊力」がテーマの立体作品です。
たべ氏のアプローチと、この絵本のアプローチは、まったく逆に見えて、底に流れるものが同じです。
この絵本のあとがきには、ORANGE OPERATIONの作品の写真も載っていますが、
この作品が、核戦争をリアルに表したものに対し、
この絵本は、美しく、壮大でファンタジックな世界で、「核戦争」という言葉はこの絵本には、ダイレクトには表されてはいません。
だからこそ、軽やかで、柔らかな文章の中に、
突然登場する、「ママははんぶんとけている」というような言葉に、身震いするような恐怖を覚えるのですが。
子供むけの話ではないでしょう。
けれど、子供が大きくなり、核に対して、何かを考えるようになったら、手渡してみたいと思います。
ーまにあいそうですか?ー
この絵本に出会って、私はおよそ15年ほどたちます。
絵本の中のこのセリフ、今でも深く印象に刻まれています。
私たちのこの世界は、まにあうのでしょうか? (ルートビアさん 30代・ママ 男の子5歳)
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