「日本の伝統芸能を楽しむ」(全4巻)シリーズの1冊。
写真をたっぷり使用した、ビジュアルの大判絵本。
「基礎知識編」「支える人たち編」「資料編」と3つにわかれた構成で、文楽についてわかりやすく伝えてくれます。
そもそも文楽って……? 今から330年ほど前、江戸時代のはじめ頃に、竹本義太夫という人が、大阪の道頓堀に人形芝居の小屋を開いた頃にはじまりました。大阪生まれの芸能なので、使われる言葉は大阪弁です。しかし江戸をはじめ日本各地で人気を博した文楽は、一時は歌舞伎をしのぐほどの人気だったそうです。
三味線が演奏する義太夫節と、太夫の語り、3人の人形遣いによって演じられる文楽。 “文楽は三位一体の芸”であり、「基礎知識編」ではその3つの役割をくわしく解説します。太夫はマイクを使わず、おなかの底から出す大きな声で、登場人物全員のせりふ、物語や場面のようすなど1人ですべてを語ります。盛り上げる三味線、そして生き生きとうごく大きな人形……。このような形式の人形芝居は、世界でもめずらしい芸能なのだそう!
舞台を、客席側と裏からと解剖しているページは必見。歌舞伎や能舞台とはまた全然違う、独特のしかけがあることがわかります。舞台床の中央にある、「文楽廻し(盆)」と呼ばれる回転式の装置は、機械ではなく「床世話(ゆかせわ)」という裏方さんが回しているのだそうです。 黒い衣装を着た黒衣(くろこ)姿の人々、黒い頭巾の中はどうなっているのか、どんな仕事をしているのか、気になりませんか? 人形そのもののしくみと秘密、首(かしら)の作り方や衣装などとともに、人形遣いの仕事ぶりについてもくわしく知ることができますよ。
「一度は見たい人気の演目」「注目!こんな場面がおもしろい」といったページには、お芝居のおもしろそうなところがたくさんとりあげられていて、読むだけでわくわくしちゃいます。もちろん「支える人たち編」「資料編」も充実。とくに人形芝居だけあって、大道具、小道具のこまかい制作ぶりには目を見張ります!
このシリーズには他に『歌舞伎』『能・狂言』『落語・寄席芸』があるので気になったものから手にとってみてください。小学生や中学生にとって、伝統芸能鑑賞の、最適の参考書となる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
文楽は330年ほど前に、江戸時代の大阪で生まれました。太夫が語り、三味線が演奏する義太夫節と、三人の人形遣いによって演じられます。このような形式の人形芝居は、世界でもめずらしい芸能だといわれています。 日本の伝統芸能が楽しく見られることがらと舞台の裏ではたらく人たちの仕事ぶりをわかりやすく解説したシリーズです。
私が文楽に興味を持ったのは40代の頃、夜の世界にいた時、オフィスの近くに国立文楽劇場があったからです。私は元々、近松門左衛門さんの大ファンだったこともあり、いつのまにか国立文楽劇場に通うようになりました。それだけにこの本はとても楽しく読ませて頂きました。これはわかりやすく、文楽の素晴らしさを教えてくれます。私は文楽は決して難しく考える必要はないと思います。やさしい人形芝居だと思えばいいのです。 (水口栄一さん 60代・その他の方 )
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