ある朝、リスは自分の誕生日のパーティを開こうと、思い出せるかぎりのおともだちに招待状を送ります。 森にいるおともだちだけじゃなくて、海のイルカやマッコウクジラや川のマスやザリガニにも、 モグラやミミズやホタルにもね。
「みんなそろって、ほんとうにきてくれるかな?たのしいたんじょうびだと思ってくれるのかな? それとも、つまらない日になるのかな?そういうことだってあるよ。 どうなるか、だれにもわからないもの」
リスは、誕生日の朝からたくさんのケーキを作って待ちます。 さあ、みんなは来てくれるのでしょうか。どんなパーティになるのでしょうか。
表題の「リスのたんじょうび」の他に、パーティをテーマにした8つの短いおはなしが収められています。 作者のトーン・テレヘンさんはオランダの国民的作家で、日本では『はりねずみの願い』(新潮社)が話題になりました。作者紹介によると、お嬢さんが幼い時に書いたおはなしや動物を主人公にしたおはなしをたくさん書かれているそうです。
この本の別のおはなし「マッコウクジラとカモメ」も、心に残ります。 海の谷底で長い間ずっとだれとも会わなかったマッコウクジラが、カモメからパーティの招待状を受け取り会いに行くおはなしです。ひとりでも平気、でももしかしたら本当はずっと前から誰かと一緒にいたかったのかも、と思う気持ち、自分を受け入れてもらえる喜びが伝わってくる作品です。
ふと撫でられると泣いてしまいそうな、普段は胸の奥にしまってあるもの… そこをおはなしにするのが巧みな作家さんだと思います。
3年生くらいから読めますが、大人のための童話集とも言えるでしょう。
やさしいたまごやき色のカバー、開くとグレーの文字と挿絵が心を落ちつかせます。ゆったりした時間に読みたい一冊。大切な人へのプレゼントにも、おすすめです。
(山田裕子 小学校司書)
なにもわすれることがないように、リスは家じゅうのかべに、小さな紙きれをはっておきました。そのうちのひとつ、すみっこのほうの紙きれには「ぼくのたんじょうび」と書いてあります。 「ほんとうだ! もうすこしで、わすれるところだったよ! ぼくのたんじょうびを……」 待ちにまった当日、リスは招待した動物たちにたくさんのケーキをふるまい、いっしょにダンスをおどり、とびきりすてきな1日をすごすのですが……。 わすれっぽいリスの、わすれられない夜を描いた表題作「リスのたんじょうび」と、8つの小さな物語。オランダの国民的作家がおくる、宝物のような短編集です。
|