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長谷川ゆきさんは「家庭文庫」開設を夢見ていたが、東日本大震災で約八百冊の絵本を失ってしまう。 その後、多くの人の助けや支援をえて「うみべの文庫」を開いたゆきさんは、託された思いを胸に、絵本と人、人と人の心をつなぎ、芽吹かせてきた。 ゆきさんを突き動かした絵本の力、言葉の力とは……
これは、宮城県塩竈市の港のそばにあった「うみべの文庫」という家庭文庫のお話です。
児童向けに書かれたノンフィクションです。
家庭文庫というのは、個人が自宅と蔵書を開放して、近所の子どもたちに本を貸し出したり、お話をして聞かせたりする、小さな活動のことをいいます。
「うみべの文庫」は、長谷川ゆきさんという女性が始めました。
ここには5千冊の絵本があったそうです。
「あった」と過去形で書いたのは、今はもうなくなっています。そして、活動を始めた長谷川ゆきさんも2018年に病気で亡くなっています。
長谷川さんが絵本としっかりと出会ったのは、子供が生まれて図書館に通いだしてから。
この頃、長谷川さんは交通事故で大けがをします。それでも出かけた図書館で、知らない子供から絵本を読んでとねだられたりします。
それから長谷川さんは読み聞かせ講座に出たり、実際に読み聞かせをしたりして絵本にもっと親しんでいきます。
そして、家庭文庫があることを知ります。
そこから何年もかけて絵本をそろえていきます。
その数が800冊を超えた2011年3月11日、東日本大震災の大きな津波が襲います。集めた絵本はたった2冊をのぞいて、すべて流されます。
一度はあきらめかけた長谷川さんの夢を知った多くの見知らぬ人の善意で、全国から絵本が集まりだして、長谷川さんはついに家庭文庫の解説という夢をかなえることができるのです。
そんな「うみべの文庫」がなくなってしまったのは残念ですが、長谷川さんの本の力を信じる思いがこうして一冊の児童書になりました。
この本のなかの長谷川ゆきさんの笑顔が、とても輝いています。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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