普通に読んだだけでは気づけない、物語のなかの小さな違和感……。そこから推理して物語の隠された意味を読み取る。一気読み二度読みは確実の、大人気の「3分間ミステリー」シリーズ。このたびBC巻が同時発売! 収録作品は全て書き下ろし&今回は作者同士が、各巻8話ずつコラボ執筆しています。一見似た物語に隠された意味は、1つではなかった! どこがどう違うのか、気がつけるかな? 【本文より/このお話の真実はぜひ本を読んでみてください】 『尾行』 最近、タカシの様子が変だ。 わたしが出かける予定があるというと、彼も決まって、人と会う予定があるといって外出する。 「ねぇ、タカシ、今日はだれと会うの?」 わたしが聞くと、 「え? あー、ユウキだよ」 タカシは目を斜め上にそらして答えた。 だけど、私は知っている。タカシは昔から、嘘をつくとき、斜め上を見つめる癖があるのだ。 タカシはどうも「わたしに言えない人」と会っているらしい。 「そっちこそ、今日は誰と会うんだよ?」 タカシが逆に聞いてきたので、 「べ、別に。中学の頃の友達だけど」 わたしは答えて、そっぽを向いた。 こっちの情報は教えない。だって、いえばその日と場所を避けてデートするから。 それに、わたしだって、彼には言えない男性と会っているのだ。 わたしがこれから会うのは長谷川さんといって、職業は探偵。 実は、タカシの行動を暴くため、わたしは長谷川さんに調査を頼んでいたのだ。 今日はその途中経過を聞く予定だった。 ところが、家を出て、待ち合わせ場所に向かっていたわたしの元に、長谷川さんから電話がかかってきた。 いま、タカシがカフェで女の人と会っているらしい。 わたしは急いでその店にかけつけた。 タカシが若い女性と仲良さそうにしゃべっている。 「タカシ!」 わたしがかけよると、タカシははじかれたように立ち上がった。 「どうしてここに……」 だけど、すぐに落ち着きを取り戻すと、悪びれた様子もなくいった。 「彼女と付き合ってるんだ」 女性は立ち上がると、わたしにむかって深々と頭をさげた。 「はじめまして、お母さん」
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