何をするにものんびりの、食いしん坊のカメくんと、しっかり者で行動的、きれいな石が大好きなイモリくん。二ひきは、川のそばに住むお隣どうしで、いつも仲良く遊んでいました。川に流れてくる葉っぱを数えたり、川で一緒に泳いだり‥‥‥。しかし、「小雨ぼっこ」をして遊んでいたある日、突然の大雨で川があふれ、イモリくんの家がまるごと流されてしまいます。それ以来、イモリくんは遠くの「ヒキガエル池」で生活することに。
「イモリくんは、池でのくらしに、なれたかな。」 大雨から一年後、イモリくんがカメくんの家に遊びにやってくることに! 話を聞きつけたトカゲくん、ヤモリくん、ノウサギくん、イタチさん・・・・・・と、川に住む仲間が次々に会いにやってきて「イモリくんおかえりなさいパーティー」が始まります。久しぶりの仲間と会えた喜びがたっぷり伝わってくる場面です。
以前と同じように、川で「たからさがし」をしたり、大きな石の上に寝そべって「甲らぼし」をしたり、川岸でお昼ごはんを食べて過ごすカメくんとイモリくん。「さわ」の様子や、カメくんの姿を見ながら、「まえと同じ。何もかわりない。」(きてよかった)と感じるイモリくん。その後も、「オオサンショウウオのおじいさん」のところに遊びに行ったり、しばらくカメくんの家で楽しく滞在するのですが、秋が近づき、とうとう「ヒキガエル池」の家に帰る日がやってきて‥‥‥。
大切な友達となにげない時間を過ごすことの喜び、生き生きとした川の様子が、やさしくあたたかく丁寧に描かれていきます。また、カメくんが育てているトマト、あじさいの花びら入りのキャンディー、カワエビのつくだにの入ったおにぎり、山ぶどうの葉っぱのお茶など、登場する食べ物もとっても魅力的。どんな味がするのでしょうね。
作者は本書がデビュー作だという、いけだけいさん。全てのページに贅沢に、高畠純さんが描くどこかユーモラスな川の仲間たちや、生き生きとした「さわ」の様子が伝わる挿絵が入り、ほのぼのゆったり幸せな時間が流れていきます。
なにげない日々やたわいもないおしゃべり。思いがけない出来事は、私たちが大切なものに気づく力を敏感にしてくれるのかもしれません‥‥‥。小学4年生ぐらいから大人の方におすすめしたい作品です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
カメくんとイモリくんは、川のそばに住むお隣どうしでした。ねぼうで食いしん坊、のんびりやのカメくんと、ちょこちょこ行動的なちょっとアーティスト系のイモリくんは、とても仲良しでした。あるとき大雨でイモリくんは家が流されてしまい、川下に引っ越していきました。夏が始まるころ、イモリくんがカメくんのうちに遊びにきました。しばらくぶりに以前と同じように、いっしょに過ごす楽しい日々。カメくんの住む「さわ」の仲間たちとのふれあいや、山奥の川底深くでみんなを見守るオオサンショウウオのおじいさんのところに遊びに行ったりと。でもイモリくんが帰る日がやってきます。また会う日を約束して、ふたりがしたことは? なんでもない日々のたいせつさをじわじわと感じる10のエピソードを収録。生き生きした「さわ」のようすが、たくさんの挿絵からも伝わってきます。著者デビュー作。
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