16世紀に成立した建築様式である天守閣。 時が下って江戸期、「天守閣にはキリストが祀られている」 という説が突如広く流布し始める。 さらにその後、日本起源説、中国建築の影響説と、 時とともに目まぐるしく変化する、天守閣をめぐる言説の数々。 はたして、天守閣にヨーロッパ文明は関係しているのか、 それとも日本固有の文化なのか。
各時代の膨大な歴史家の記述、建築史学の研究などを横断し、 真っ当な研究からトンデモ説までをふくむ 多様な言説を分析してゆくなかで浮かび上がる、日本人の幻想の系譜。 芸術選奨文部大臣賞受賞作。 <目次より>第一章 天守閣と天主教 ハワイにそびえる天守閣 十八世紀からの都市伝説 太秦のネストリアン クルスの家紋 江戸の西洋史 キリシタンへの想像力 伊丹城に天守閣はあったのか 天主にまつわる諸宗教 歴史家たちのヨーロッパ 擬洋風建築の天守閣
第二章 日本、中国、そしてヨーロッパ 日本文化がかがやくとき 黄昏のマンチェスター学派 モダン・デザインにながされて 石垣から読めること 『天守指図』とカテドラル 八角形がひめた謎 よみがえるヨーロッパ 日本から中国へ 天道思想とキリスト教 芸能史か、思想史か 建築か、宗教か 国語辞典の天守閣
第三章 織部灯籠とキリシタン 『古都』と『舞姫』 つくられた伝説 灯籠を売るひとびと 学問と信仰
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