きょう、風がかわった! 『はるいちばん』【NEXTプラチナブック】
窓をあけ、ひゅーっと入ってくるのはぬるい風。
「きょうだ」
女の子は家を飛び出し、一目散にどこかに向かって駆けていく。追い風に背中を押されながら漁港を抜け、大きな川も飛び越えて、山道やトンネルだって駆け抜ける。やがてその視線の先に見えてきたのは大きな灯台。その脇道をまわりこみ、女の子は手を広げる。そして……?
なんて気持ちのいい絵本なのでしょう。主人公の女の子の目的はただひとつ。春一番を自分の身で受けとめ、つかまえること。
「さあ、こいっ!」
海の町に住む彼女にとって、おそらく風から季節や天気を読むことはお手のもの。その表情はずっと凛々しく頼もしく、かっこいい。読者はただ女の子のうしろをついていき、ページをめくってその緊張の瞬間を迎えるだけ。そして、不思議な開放感に包まれながら絵本をとじ、満足するのです。
春を迎える季節だけでなく。少し立ち止まった時には、この絵本を手に取って、駆け抜ける風をあびてみる。そんな一冊になってくれそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
今日、風がかわった。春をつげる風を追いかけて、わたしは走る。そして……。季節のおとずれを大切に感じる、豊かな心を描いた絵本。
明快な絵のなかに、さりげなく情感をこめた明るい作風で人気の青山友美最新作。春の訪れを告げる風をテーマに描いた本書は、子どもの自然を感じ取る力と、その本能におもむくまま風を迎えにいく、ただそれだけを丁寧に描いた一冊。言葉は少なく、絵のなかに季節の言葉を感じとるのが楽しい絵本です。
青山友美さんの『うみのいえのなつやみ』という作品が大好きなので、こちらも読みたいと思いました。
昨日とは違った生温い風が吹き抜けた朝、女の子は犬を連れ、街を抜けて川を渡り、岬の灯台まで一目散に走ります。
「行くよ。わたしが一番につかまえるんだ!」と走り出す女の子。そのはやる気持ちがとてもよくわかりました。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子13歳)
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