どこまでも続く青い海と空にかこまれた「ナナカラやま」は、美しく豊かな世界。ナナカラやまには、動物や花や木や魚、虫や石や風‥‥‥など数えきれないほどのいろいろな生きものー「ナナカラたち」が暮らしています。
人間が昔から物語を語り継いできたように、ナナカラたちもたくさんの語り継ぐ物語を持っています。うれしいこと、かなしいこと、ずっと昔からあったことからつい昨日の出来事まで、おはなしやうたにして楽しみながら大切に伝えるのです。
1巻目の『くまおばあちゃんのジャム』では、くまおばあちゃんが孫のこぐまと過ごす日常の中に、自然にお話が溶け込んでいます。 ミツバチたちにハチミツを分けてもらうかわりに語る「はなひつじやま」の話。 夜寝る前に聞く「たぬきのむすめさん」の話。このお話はとくにこぐまのお気に入りです。
どちらのお話にもナナカラやまの自然の豊かさや恵みがたっぷりと感じられて、かつユーモラスで楽しさがいっぱい。そんなおばあちゃんが語ってくれる物語が作品の大きなみどころですが、さらに美味しいものが出てくるところもとっても魅力的! おばあちゃんが作るやわらかくて白いおだんごに、のいちごとはちみつで作ったできたてのジャムをかけて食べる様子がたまりません。また、自然から何かをいただく時には、必ずかわりに何かを差し出すおばあちゃんの姿勢は、自然を大切にする気持ちをさりげなく教えてくれているようです。
こちらの「ナナカラやまものがたり」シリーズは、2014年に童心社さんより刊行された『ナナカラやまものがたり』に新たな物語が加わり、全3巻となってあらたに誕生したシリーズです。判型がちょっと小さめで子どもの手のひらにすっぽり入りそうな大きさと、ほんのりとした和の色彩の表紙は、子どもだけでなく大人の心も掴んでしまいそうな可愛らしさ。本のすみずみまで丁寧に描かれる自然の美しさと楽しさからは、作者のどいかやさんの自然を敬い、愛する視点がたっぷり伝わってきます。
子どもから大人まで楽しみたい「ナナカラやま」の美しい世界。この先長く読み継がれるシリーズとなっていくことでしょう。子どもたちには、とくに絵本から読み物への移行期におすすめです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
あおくて終わりのない海と空にかこまれたナナカラやまは、とても美しくて豊かな世界。動物や花や木や魚、虫や石や風…みんなナナカラやまに住むナナカラたちです。ナナカラたちは、うれしいこと、かなしいこと、ずっと昔からあったことも、つい昨日のできごとも、お話にしたり歌にしたりして、楽しみ、伝えていきます。 1巻は、くまおばあちゃんが孫のこぐまに語ってきかせる「はなひつじやま」や「たぬきのむすめさんのしっぱい」のお話。絵本から読み物への移行期にオススメの幼年童話シリーズです。
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