若冲ブームの仕掛け人による近世絵画論集成
美術の世界でのちに振り返って、あきらかに時代を画した展覧会があります。2000年、京都国立博物館で開催された「没後200年 若冲展」はまさにそんな展覧会を代表する企画で、これをきっかけとして一大若冲ブームが起こり、その人気は今に続いています。その間、当初は京都の青物問屋の主人にもかかわらず「遊び知らずで絵ばかり描いたオタク絵師」と思われていた若冲像が、新たな資料が発見され、京都錦市場を幕府の暴政から救った英雄とまで変わります。著者の狩野博幸氏は展覧会で新発見があるごとに論じ、「町年寄若冲の生き方」「若冲の歌を聴け」「若冲よ、あなたはどこまでゆくのか」と若冲感を刷新してきました。 このように、狩野氏は長年、京都国立博物館で魅力あふれる展覧会を立案・実現して全国の美術ファンを惹きつけ、展示のみならず図録に執筆した文章でファンを魅了しつづけてきました。、本書は半世紀におよぶ狩野氏の美術論をまとめる企画で、伊藤若冲、曾我蕭白、長澤蘆雪、岩佐又兵衛といった絵師が織りなす近世絵画の豊かな世界を論じた文章で来場者をあっと言わせてきた、狩野ワールドがたっぷり詰まった、読み応え充分な一冊です。
【編集担当からのおすすめ情報】 遊びに一切興味を持たない根暗なオタク絵師と評された若冲が、ある資料の出現で、京都・錦市場商店街を幕府の暴政から救った英雄に変わるさまを、10年以上若冲を見つめつづけてきた著者がそのときどきで論じた文章で辿るだけでも、ミステリー小説を読むような面白さです。
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