トルコの谷間の小さな村。両親を亡くしてから「誰かを愛することは、結局自分が傷つくこと」と思いこんだ少年ジャミールは、周囲の人々に対して固く心を閉ざして生きている。しかし、野良犬との出会いや地震という予期せぬ自然災害をきっかけに、人間的なあたたかい感情を取り戻すまでを描いた成長物語。
悲しみで凝り固まった心では、「同情」と見えていたものが、実は人々の友情や愛情であったということ。そして自分は一人ではなく、周囲の人々といかにつながっているか、そしてその心のつながりがあることこそが、自分がこれから生きていく上での支えになるのだ、と気づいていくジャミール。
困難にぶつかった時、絶望の淵に立たされた時、立ち上がれそうもない悲しみに直面した時、人は決して一人では乗り越えられない。立ち向かう強さを持つことができるのは、自分の存在に寄り添ってくれる人(もの)の存在があってこそなのだ、と本書は教えてくれる。
たて20.6cm×よこ15.2cm/四六判縦 80ページ
|