「枢軸国側諜報網の機関長」と連合国側から恐れられた「インテリジェンス・ジェネラル」小野寺信は、なぜ、欧州の地で価値ある情報を入手できたのだろうか。それは、小野寺が人種や国籍、年齢、宗教などを越えて、あらゆる人たちと誠実な人間関係を結んでいたことと無縁ではない――(序章より) 「インテリジェンス」の極意を体現した日本人武官「小野寺信」。イギリスの情報機関、MI5が徹底監視の対象として“個人ファイル”を作った唯一の日本人武官といわれるこの男は、独ソ開戦や、アジアでの英軍の動き、原爆開発情報といった様々な重要機密にとどまらず、ヤルタ会談の直後には、ソ連がその3カ月後に対日参戦をするという情報まで掴んでいた――。第22回山本七平賞受賞の気鋭のジャーナリストが、丹念に第一級史料を調べ上げ、取材を重ねる中で、見極めることのできた真の愛国者「小野寺信」の流儀。
[目次構成] 序章 インテリジェンスの極意を探る ◆諜報の神様、ヒューミントの達人◆日本版CIA設立に向けて ほか 第一章 枢軸国と連合国の秘められた友情 ◆「あなたはポーランドの真の友人」◆死後四十五年目の昇進と「英雄」の顕彰碑 ほか 第二章 インテリジェンス・マスターの誕生 ◆「生きた語学」を実戦で学ぶ恰好の機会◆英才教育を受けて「陸軍第一の赤軍通」の道へ ほか 第三章 リガ、上海、二都物語 ◆命にも等しい暗号書を着物の帯に◆中国共産党が謀った? 盧溝橋事件 ほか 第四章 大輪が開花したストックホルム時代 ◆MI6より日本に忠誠をつくす◆ソ連情報源?の開示を迫ったキム・フィルビー ほか 第五章 ドイツ、ハンガリーと枢軸諜報機関 ◆聡明で語学堪能、そして強い愛国心と法学博士号を持つ弁護士◆007のようにハンサムでスマート ほか 第六章 知られざる日本とポーランド秘密諜報協力 ◆外交特権を切り札に、ポーランド諜報組織を守る◆ヒューマニズムとインテリジェンス ほか 第七章 オシントでも大きな成果 ◆?んだものの握りつぶされた? アメリカの原爆情報◆新聞が描き出す、隠しきれない重要情報 ほか 第八章 バックチャンネルとしての和平工作 ◆スウェーデン国王グスタフ五世からの忠告◆終戦前日、英王室から親電 ほか *本書は、二〇一四年に刊行された『「諜報の神様」と呼ばれた男――連合国が恐れた情報士官・小野寺信の流儀』の副題を改題し、「文庫版まえがき」を新たに書き下ろして刊行するものです。
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