ワシントンは、彼以降の大統領のように、大統領制や連邦制という政治制度が確立された時代に大統領になったのではない。彼は、ほかのどの大統領も負うことのない役割、つまり、憲法で定められた大統領制や連邦制を具体的に作動させる役割を担った。18世紀後半当時においては、王のいない社会というのは想定しにくく、王のいない政治体制をつくるというのは非常識かつ前例を求めることができない試みであった。カエサルやナポレオンのような偉業を達成したカリスマをもつ英雄でもなく、ジャクソンやアイゼンハワーのような輝かしい軍歴もなかったワシントンは、どのようにして初代大統領となったのか。植民地時代から独立戦争、合衆国憲法の制定、連邦政府の発足という歴史のなかでその生涯をたどり、彼がどのような人物であり大統領であったのかを探る。
|