◆第三詩集
棒は原初的な道具である 恐らくは、われわれの祖先が 敵や獲物を打ち据えるために 木の枝か何かを手にしたことが 棒という道具の始まりだろう
棒はその単純さゆえに多用され 打ったり叩いたりする以外にも 手の届かない場所を探ったり 傾く何かの支えとして 絶えず暮らしの場に置かれてきた
しかし棒は突然、見るも無残なさまで バギリと折れてしまうことがある
この世界はある瞬間 非常にバランスを欠くことがあって 一時的に膨大な負荷が 一本の棒にかかってしまうのだ
また、見た目には堅固であっても 棒にはその実、愚直で脆い側面がある
ここにある一本の棒 それは私たちの祖先が手にしたままの姿で 確かに今も存在している
しかし、棒はもはや 日々組み替えられていく世界の中で その居場所を失いかけている
棒に触れると 遠い岸辺にある小石のように 冷たい
(――「棒」より)
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