本書は、作家で比較文学者の著者による「日本文学史早わかり」である。個人による日本文学史は数多あるが、本書は、架空の作家が出版社の企画で、もし古典文学の時代から芥川賞・直木賞があったら、どの作品が芥川賞で、どの作品が直木賞を受賞するか、という単行本企画のために架空の出版社に月1回訪れて、そこでテープ録りをする取材のやりとりを小説風に描く。狂言回しの編集者とのやり取りが絶妙で、オーソドックスな日本文学史では触れられないゴシップ的エピソードも盛り込まれているので、楽しみながらすらすら読める。万葉集から始まる和歌、芭蕉などの俳句、それに歌舞伎や能などの芸能も対象に含めているので、日本文芸史早わかり的な厚みと面白さがある。大上段に構えた文学史とは異なり、肩ひじ張らずに通読できる「日本文学通史」。 【章目次】 第1章 平安文学〜始めはやっぱり『源氏』から 第2章 和歌〜古代から平安まで 第3章 中世文学〜説話集を中心に〜 第4章 室町時代から織豊時代〜能楽を中心に〜 第5章 江戸文学〜歌舞伎と俳諧を中心に〜 第6章 近代文学〜芥川龍之介まで
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