虔十公園林/セロひきのゴーシュ/革トランク/化物丁場/毒もみのすきな署長さん/フランドン農学校のぶたほか。
宮沢賢治童話全集全12巻のうちの第8番目。太田大八の白黒スクラッチ画が、8つの物語に深みを添えています。
●「虔十公園林」は、ひとの恥を洗い出すような慎み深いお話です。
●「セロひきのゴーシュ」は、へたくそと揶揄されるセロひきのゴーシュが、毎夜やってくる動物を相手にセロ稽古するうち、たった一週間でひとを引きつけるほどの演奏を身につけるというお話。6つの動物たちの挿絵が、目次でお出迎えしてくれます。
●「フランドン農学校のぶた」は、ひとの業をあぶり出す、ひとと食用豚のゆかいで泣けるお話。なんど読んでも人間って奴はと、考えます。
●「革トランク」は、賢治自身の至らなさを面白おかしく話にしたとか。どこか間が抜けた、でも憎めないボンボンのお話。
●「化物丁場」は、鉄道建設現場の、やってもやっても崩れる線路基礎工事の話。読んでいて、どんなところだか実際に行ってみたいと思ってしまう。
●「毒もみのすきな署長さん」は、警察署の新署長が何と、禁じ手の罪を犯して死刑になる話。でもこんどは地獄でも楽しむぞと息巻くのだから、人間って奴は。
●「ひかりの素足」は、二人の兄弟が雪の事故に遭い、その一人が亡くなるという涙なくして読めない物語。仏様が現れ、生き残りを申し渡す子に、ひとの道を説くのです。なんど読んでも、問い質されている気持が沸き起こります。
●「インドラの網」は、疲れ果て高原で倒れた主人公が、夢か幻か極楽浄土を見る話。ふしぎな空間を感じます。
ふしぎにも娘と二人、幾度となく読みかえす本となりました、人間って奴は、何なんだと。感謝、感謝 (もゆらさん 50代・その他の方 )
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