おんなのことば」をご紹介するなら、まず茨木のり子さんの「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)の話から 始めなければなりません。同書は1979年に 出て約四半世紀。ロングセラーをつづけ、50万冊を超えています。 この本を読んで、詩が好きになる読者は多く、編者もその一人です。はじめに、の冒頭はこ う始まります。 「いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。 いい詩はまた、生きとし生けるものへの、いとおしみの感情をやさしく誘いだしてもくれます。」 ひとの心を解き放ってくれる、というのは、ひとにはもともとみずみずしい心があるということですし、いとおしみの感情を 誘いだしてくれる、というのは、ほんとうはだれにも豊かな感受性がある、という真実を語っているのです。 編者はこの「詩のこころを読む」に導かれて詩の読者になり、詩集の編集者になりました。ぜひご一読をおすすめします。 さて、この種の入門書には、著者は自分の詩を入れます。茨木さんは、そうしませんでした。その潔さに編者は 感銘を受け、自分の手で茨木さんのアンソロジーを作る決心をし、10年後に実現しました。編者は、とりわけ 精神の高い詩ばかりを集めました。「自分の感受性くらい」を冒頭に置き、「汲む」でしめくくる という贅沢な編集になりました。 この二つの詩をご紹介することはあえて控えます。どうぞ書店で、ご自分で手にとってご覧になってください。 茨木のり子さんの詩は、物ばかりが豊かで、精神が弛緩してしまった今の日本人を、 将来救うことになる、と編者はかたく信じています。
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