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こうさぎのふわりは、拾ったナニカを森のひろばにうめました。やがてナニカの芽が出てぐんぐん大きな木に育ちます。きれいな花が咲き、おいしそうな実がついたのですが…。不思議な種が巻き起こす騒動を、コミカルに描きます。
【あらすじ】
いたずら魔女が落とした、「ピンクと黒の縞々の円いもの」は一体なにか?ウサギが最初に拾って、飴でないことをたしかめる。物知り梟は、「しらない」と言えない。とりあえず「ナニカの種」ということで、撒いてみる。目が出て育ち、実がなり…そしてもめごとが巻き起こる。考えさせられる一冊。
【感想】
絵本は甘くない。子どもが読むファンタジーだと思って気軽に手を出すと、とんでもない味わいの作品に出会ってしまう。この本は、タイトルや表紙の印象と、中身のギャップが激しくあって、新鮮な驚きがあった。
読み終わると、考えさせられる。内容が哲学的。動物をキャラクターに仕立てているけど、現実の人間社会に必ずいる「困った人」を思わせる。こういうイヤな部分は、自分も持っているとわかる。そして、作物が育って収穫を迎える段になると、それぞれが自分(だけの)利益を確保したくて、争いになる…今の社会、世界のありようを見事に描いていると思った。
子ども時代も、嫌なことはいっぱいあった。大人顔負けに、争いもあるし、嫌な奴もいるし、自分の中に嫌な性格を見つけるし…もう、どうしていいのかわからなくなることもあった。だれでも108つの煩悩があると、仏教の世界ではいうらしい。悩みはなくならないし、問題も解決したと思ったら新たな問題が出てくる。いつまでたっても「めでたし、めでたし」にならないのが、浮世のさだめ。
この絵本を読んでいて、そんなことを考えてしまった。
あんなにかわいい見た目の〇〇さんが、こんなに強欲だったなんて!普段はあんなにいい人なのに、いざとなったら冷たいものだね…そんな風に、表面上のいい人をすかして本音の部分が見えてくる経験を、これからこの本を読んでいる子どもたちもきっとするのだろう。そうやって、大人になって年をとっていくのが、浮世のさだめ。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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