三平がみつけたふるいツボ。何かいいものがはいっているのではないかと期待して、センをぬくと、中からでてきたものは、なんと!?
【内容】
おじいさんは、三平に父と母のことを教えるとすぐにポックリ死んでしまった。一人ぼっちになった三平のもとに、いなくなっていた父が帰ってきた。父は小人を研究していたが、病気になり小人の世話は三平がすることになった。しかし、家の近くにはいたずら好きの狸が待ち構えていて…
田舎の学校に通う少年と、妖怪たちの、生活感あふれる物語。
※同シリーズ「カッパの三平水泳大会」の後日談。
【感想】
水木先生は、いつでも容赦なく生活の厳しさや、人間のセコさ・泥臭さをしっかり描いてくださいます。今回も、少年が父親がろくでなしだから辛い生活をしないといけないと嘆いたり、最後の場面で大人たちがさっさと帰ったり(結末は是非とも読んで楽しんで欲しい!)…など、人間の浅ましさが全開。「魔法」という言葉がタイトルにあるが、まったくもって「現実」感溢れるお話です。
例えば、魔法狸を「突然現れた乱暴で横柄な、遠い親戚」、「因縁をつけてくる暴力団」などに置き換えて話を読み進めてみると、実話ではないのかと思うほど。村人の浅ましさや、大人の身勝手、切羽待った時の子どもの知恵など、実によく人間を観察して描かれていると思いました。
水木先生ご自身も、大変な人生経験をあれこれなさったから、その過程でいろんな人間模様を見聞きしてきたのでしょう。こういうお話は、人生にろくなことがなかった人が読むと、本当に身に迫る感じがある。…ということで、私は心底、身につまされるお話でした。
前作の水泳大会の結果、三平は泳げもしないのに妖怪たちの助けを借りて選手向けの大会に出るが…(略)…というところも、人生はズルできない、と教えてくれるいい話だと思う。期待外れで、ガッカリしている村長さんたちの対応も、「大人の世界」を見事に表現していて好きだ。他人には期待しないで生きましょう。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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