「ルルとララのおかしやさん」シリーズや、「なんでも魔女商会」シリーズで、低・中学年の子ども達に絶大な人気を得ているあんびるやすこさんのちょっと上の学年向けのYAシリーズ「アンティークFUGA」の1巻が、このたび、大人の方にも手軽に読める文庫版になりました。
中学一年の風雅(ふうが)は、両親が突然行方不明になって半年、一人で暮らしています。ある日見つけたのは、父親がくれた木片のペンダント。風雅は、ひょんなことからペンダントに宿る精霊を呼び出してしまう事態に。現われたのはシャナイアと名乗る超美形だけれど、不機嫌な精霊。一生に一度だけ願いを叶えてくれるというシャナイアに、風雅は「両親がかえってくるまで兄さんになってほしい」と頼みます。そうしてシャナイアと兄弟の契約を結んだ風雅は、孤独な毎日から解放されほっとした気持ちを味わいますが、それもつかの間、生活のために「アンティークFUGA」の名で骨董店を再開します。
代々骨董店を営んできた風雅のご先祖さま達は、古い品物に宿る「つくも神」という精霊を見たり、話すことができたと言います。その精霊をなかなか見ることができず才能がないとあきらめていた風雅でしたが、シャナイアに「自分の考えでものを知ろうとするな。ただ受け入れるんだ」と言われたことをきっかけに、次第に見えたり、話したりできるように。そして、精霊に聞いたアンティークの薀蓄話をお客に話すうちにお店は大繁盛。しかも、美男子のシャナイア目当てに来るお客もどんどん増えて…。
その古い品物に宿る「つくも神」が、毎回いろいろな事件を引き起こすのがこの「アンティークFUGA」シリーズ。今回は、「伝家の宝刀」に宿る精霊が、店にやってきた大山千明の前に突然武士の姿で現われ、何か事件を巻き起こすようです。そこには長い時を越えた悲しい歴史の物語が秘められているようですが、果たしてどうなることやら!? いつも偉そうにしていて口の悪いシャナイアと中一といってもまだかわいらしさが残る風雅が次第に心を通わせていく様子や、骨董品から現われる美しい「つくも神」の姿とその衣装を想像する楽しみ(たいてい、その骨董品の品格にふさわしい美少年や美青年が現われます)、名だたる銘柄の骨董品の魅力など、いろいろな楽しみ方ができるこちらのお話。巻末についている「骨董目利きブック」では、お話の中に出てくる骨董品や古美術品を分かりやすく解説してくれていて、お話の合間に読んでも、最後に読んでも、お話をより味わい深いものにしてくれます。合わせて注目してみてくださいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
中学一年生の風雅は、骨董店を営む両親が失踪して以来、一人で暮らしている。けれど父親がくれたペンダントから、超美形だけど不機嫌な青年姿の精霊シャナイアを呼び出してしまい、一緒に暮らすことになり……!?
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