夕方、父は幼い娘を抱いて散歩に出かける。家の前の道をゆっくりと歩いて行くと、ありふれた日常の様々な風景が目に映る。 庭仕事を終えて休んでいる隣家の女性、風に揺れるオ―クの枝、追いかけっこをするリス、のんびり歩くネコ、ドアの開け閉めの音、アップルパイの焼けるにおい、郵便配達人・・・ごくあたりまえの夕方の情景。 父はそれらのひとつひとつに注意をむけ娘に語りかける。入江の見える場所まで来ると、暗くなった空に丸い月が出ている。 そこから道を引き返して行くと、来る時に見た風景が時間の経過とともに変化していることに気づく。 受け取った手紙を読んでいる人、家に帰って行くネコ、洗濯物をとりこむ人、姿を消したリスたち、静まったオ―クの木・・・家に着くころ、日はとっぷりと暮れ、明かりのついた家の前に、ふたりを むかえる母親の姿が見える。 穏やかなベッドタイムストーリー。
「おやすみ」をいうまえに、ちょっとそこまで散歩にいこう。
小さな娘をつれて父親は散歩に出かけます。
入江の見えるところまで行って、月がのぼっているのに気づき、同じ道をひきかえします。
同じ道でも、行きと帰りでは違う風景。
郵便配達が歩いていた行き道。
帰り道では明かりのついた家の中で手紙を読んでる人が見えます。
そして父娘をやさしく母親が迎え入れるところで散歩は終わります。
すっかりと日は暮れて気づけば「おやすみ」をいう時間になっていたのです。
日常の光景が描かれているのこの絵本が、なぜこれほど美しいと感じるのか。
この作者が繰り返されるこの日常を愛しているのだと感じられます。
行きには親しみやすく感じた樫の木が帰りにはなんとなく別な木に見える。
行きと帰りでは違った色、におい、音、温度も。
山本象さんが渡米中に書店でみて気に入って出版社に持ち込んだそうです。
絵もさることながら、訳の文章も、フォントも美しい。
図書館で借りて気に入り購入しました。我が家では興奮した夜によく読んでます(笑)こどもが大好きな本、というわけではありませんが、こういう美しい本も読み聞かせに取り入れたらいいなと思います。 (ほおずきさん 40代・ママ 男の子6歳、女の子3歳)
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